お役立ちブログ
Blog
ベトナムと日本で仕事の進め方はどう違う?すれ違いを防ぐコツ
ベトナムと日本の仕事の進め方の違いは、国民性よりも、指示の伝え方・報告の習慣・評価の仕組みといった環境の差から生まれます。
オフショア開発やBPOを検討していると、「文化が違うと聞くけれど、具体的に何がどう違うのか」が分からないまま話が進みがちです。
抽象的な文化論では、明日からの進め方は決まりません。
この記事で分かること
・ベトナムと日本で仕事の進め方が食い違う具体的な場面
・なぜその違いが生まれるのか、背景にある仕組み
・すれ違いを減らすために発注側ができる工夫
ベトナムと日本、仕事の進め方の違いを一覧で
まず全体像です。詳しくは次のセクション以降で扱います。

表のとおり、どちらが優れているという話ではありません。日本のやり方は、前提が揃った相手にしか効かない省エネ設計というだけのことです。
ーなぜ違いが生まれるのか
背景を押さえておくと、対処の当てがつきます。
●言語の距離
日本語は主語や目的語を省いても成立する言語です。
国内のチームでは、その省略を補う共通の前提があるから通じます。
相手がその前提を持っていなければ、省略された部分は空白のまま残ります。
●労働市場の構造
ベトナムでは転職によるキャリア形成が一般的です。
同じ会社に長くいることが前提になっていないため、「暗黙のルールを何年もかけて覚える」という日本型の人材育成が成立しにくくなります。
裏返せば、ルールは明文化されていることが期待されます。
●年齢構成
ベトナムのITエンジニアは20代が約58%を占めます(TopDev「Vietnam IT Market Report 2024-2025」)。
若い層が中心の現場では、経験則で補うより、手順が定義されているほうが安定します。
●カレンダー
ベトナム最大の長期休暇であるテト(旧正月)は旧暦にもとづくため、毎年時期が変わります。
日本側の年度感覚とは別のリズムが動いています。
具体的にどこで食い違うのか
★指示の出し方:「いい感じに」が通じない
日本のチームでは通る「よしなに」「一般的なやり方で」「常識的な範囲で」といった指示が、そのままでは機能しません。
対策は単純で、期待する成果物の形を先に見せることです。文章で説明するより、参考画面のスクリーンショット、記入済みのサンプル、過去の納品物を1つ渡すほうが速く正確に伝わります。
やらなくていいことも書くのが効きます。対象外を明示しておくと、余計な作業と余計な確認の往復が消えます。
★報告のタイミング:日本の「報連相」は特殊な型
日本では、問題が確定する前の段階で相談することが評価されます。
「まだ分からないのですが、少し引っかかっています」という報告に価値があるという合意が、国内では成立しています。
この合意は自明ではありません。事実が確定してから報告するのが誠実だ、という考え方も同じくらい筋が通っています。
問題になるのは、どちらの型で運用するかを決めないまま走り出すことです。
決め方としては、報告の閾値を条件で書き出すのが確実です。
・予定より半日以上遅れる見込みが立った時点で連絡する
・仕様に解釈の余地を見つけたら、判断せずにその日のうちに投げる
・テスト中に再現手順が特定できない不具合を見つけたら、特定を待たずに一報を入れる
「気になったら早めに言ってください」では動きません。何をもって「気になった」とするかが人によって違うためです。
★期限の意味:締切はいつを指すのか
日本の現場では、締切の前日には形になっていて、当日は最終確認、という運用が暗黙に共有されていることがあります。この余白は、指定しなければ存在しません。
「10日納品」と伝えれば、10日に作業が終わります。
レビューと修正の時間が必要なら、それを含めた日程を最初から分けて伝えるのが確実です。
中間確認日を別途カレンダーに置くのが一番揉めません。
★評価とキャリア:長く勤めることの意味
日本では在籍年数が信頼の材料になりますが、転職が一般的な市場ではその前提が弱まります。
発注側にとっての実務上の論点は、担当者が替わる前提でチームが組まれているかどうかです。
次の点を確認しておくと、引き継ぎ時の落ち込みを抑えられます。
・やりとりがチャットの流れではなく、ドキュメントに残っているか
・窓口となる担当者が1人に集中していないか
・テスト観点やテストケースなど、判断の根拠になる資産が形として残っているか
★休暇カレンダー:テトと年末年始のずれ
テト(旧正月)はおおむね1月下旬から2月中旬に入り、日付は毎年変わります。
公式休暇は5日前後ですが、帰省を伴うため前後の稼働も落ちます。
一方、日本の年末年始はベトナムでは通常営業です。逆に、こちらが動いている時期に向こうが止まります。
年間計画を引く段階で、双方の休暇を1枚のカレンダーに並べておくのが基本になります。
関連記事:ベトナム人材って実際どう?働き方・考え方の特徴
すれ違いを減らす6つの工夫
1. 完成イメージを現物で共有する — 画面、サンプル、過去の納品物。文章より速い
2. 判断基準を数字と条件にする — 「早めに」ではなく「木曜17時まで」(具体的に)
3. 報告の閾値を先に決める — どうなったら即連絡か、を条件で書く
4. 確認の頻度を上げる — 2週間分まとめて見ると、ずれたときの手戻りも2週間分になる
5. 口頭の合意を残す — 会議は議事録とセットで運用する
6. 休暇カレンダーを最初に統合する — テトと年末年始を1枚にする
どれも特別なことではありません。
国内のプロジェクトでも本来やったほうがよいことが、相手が変わったことで省略できなくなっただけです。
ー「文化の違い」で片づけないほうがいい場面
ここまで違いを説明してきましたが、注意点を1つ。
すれ違いが起きたときに「文化が違うから」で説明を終えてしまうと、直せるものまで直せなくなります。
実際には、指示の書き方が曖昧だった、確認の頻度が低すぎた、判断基準を渡していなかった、という管理側の問題であることが少なくありません。
また、傾向はあくまで傾向です。ベトナム国内でも、ハノイとホーチミンでは仕事のテンポの傾向が違うと言われますし、日系企業での勤務が長い方と欧米系企業出身の方では進め方がまったく異なります。
国籍を根拠に相手の行動を予測しはじめたら、そこで一度立ち止まったほうがよいと考えています。
オフショアQA(品質保証)の委託先を選ぶときの確認ポイント
進め方の違いを埋める仕組みを、委託先が持っているかどうかが分かれ目になります。
問い合わせの段階で聞いておくとよい項目を挙げます。
・仕様や要件のすり合わせに、どのくらいの工程と時間を確保しているか
・報告のフォーマットと頻度が決まっているか。不具合報告に再現手順・発生環境・期待結果が揃うか
・日本語でのやりとりが、どの階層まで可能か
・担当者が交代した場合の引き継ぎの仕組みがあるか
・テトを含む年間の稼働カレンダーを事前に共有してくれるか
・日本のお客様向けの品質基準を前提にした運用になっているか
当社では、QA(品質保証)の一環として、Web・モバイルアプリのソフトウェアテスト、およびモバイルゲーム・Nintendo Switch・Steam向けゲームテストについて、テスト計画・テスト設計から実施、不具合報告、修正確認まで一気通貫で対応しています。
オフショアで起こりやすい認識のずれや報告不足については、運用ルールの設計段階から対策を組み込んでいます。
まとめ
ベトナムと日本の仕事の進め方の違いは、指示の伝え方、報告のタイミング、期限の解釈、キャリアの前提、休暇カレンダーに現れます。
その多くは、日本の現場が省略できていた前提を、省略できなくなったという形で起きています。
つまり、対処は明文化です。完成イメージを見せる、判断基準を数字にする、報告の閾値を決める。
手間はかかりますが、国内のプロジェクトでも効く手間でもあります。
オフショアでのテスト・QA体制についてご検討中でしたら、お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. ベトナムのチームとは、日本語と英語のどちらでやりとりするのが一般的ですか?
窓口となるブリッジ担当は日本語または英語に対応できることが多く、実作業者は現地語のみというケースもあります。
どの階層まで直接やりとりするのかで運用が変わるため、契約前に確認しておくことをおすすめします。
Q. 時差はどのくらいありますか?打ち合わせの調整は難しいですか?
ベトナムと日本の時差は2時間で、ベトナムのほうが遅くなります。
日本の午前中はベトナムの早朝にあたりますが、午後以降は重なるため、リアルタイムの打ち合わせは比較的組みやすい部類です。
Q. 仕様書が固まりきっていない状態でも依頼できますか?
依頼自体は可能ですが、曖昧な部分は事前のすり合わせが必要になります。
画面遷移図、既存の動作環境、優先度の考え方など、判断材料になる資料があるほど精度が上がります。
仕様が動く前提であれば、その前提を共有したうえで進め方を設計します。
Q. すれ違いが起きたとき、どう修正すればよいですか?
まず、指示の書き方と確認の頻度を見直すことをおすすめします。
文化の問題に見えるものの多くは、判断基準が渡されていない、確認の間隔が長すぎるといった運用の問題です。
どの時点でずれたのかを一緒に振り返る場を設けると、原因が特定しやすくなります。